―日本住宅性能検査協会が「サブリース問題」で果たした役割―
過去7年間で相談センター(日本住宅性能検査協会)に持ち込まれた事案約450件余の中で、殆どがレオパレス21社絡みであった。これらコンサルの現場経験からサブリース問題の本質を考察し、健全なサブリース制度発展の灯火としたい。
ちなみにサブリース第1号は矢崎ホワイトビル(1984年3月竣工)と言われている。
「サブリース」の一般用語としては、日本経済新聞最初の記事(1991年8月12日)であると言われている。
1.「落とし穴」が浮き彫りに
サブリース業者は、サブリース契約のメリットをセールストークにして、土地所有者に自社または関連建設会社のアパート建設を促すビジネスモデルを構築。1992年の生産緑地法改正で「農地の宅地並み課税」が導入されると、土地の有効活用や相続税対策とも相まって、アパート建設大手4社(大東建託、レオパレス21、積水ハウス、大和ハウス工業)の受注高が大きく拡大していった。
ところが、その一角を占めるレオパレス21とサブリース契約を結ぶアパートオーナーが、大幅な賃料減額や突然の解約を突きつけられるトラブルが相次いだ。これらの事例からは、たとえ30年一括借上げの契約を結んでも将来リスクを抑制できないという、サブリース契約の「落とし穴」が浮き彫りになった。
寄せられたレオパレス21「サブリース契約を巡る相談事例」
- 物件築年数が4年目にもかかわらず、サブリース業者から賃額減額を求められた。
- 物件築年数が14年目で、いきなり契約解除の申し入れがあった。
- 物件築年数が6年目にもかかわらず、止む無く賃料減額に応じたが、その半年後にも再度賃料減額の申し入れがあつた。
- サブリース業者からの太陽光発電パネルの設置、セキュリティ設備の設置工事の要求を拒否すると、いきなり賃料減額の申し入れがきた。
- 物件年数が15年目で賃料減額を迫られた。このアパート収入だけでは、次月の原稿返済が不可能なので意図的にデフォルトしたい。競売を覚悟している。
2.原因は、2008年のリーマンショックか?
そもそもレオパレス21が賃料の大幅減額や契約解除を求める原因は、2008年のリーマンショックにさかのぼる。単身者用アパートを得意とする同社では、管理する物件の半数近くを製造業者や派遣会社などとの法人契約が占めている。ところがリーマンショックによって向上の稼働率が低下すると、そこで働く派遣社員等の非正規社員が契約を切られ、製造業者者や派遣業者もレオパレス21と結んでいたアパート契約を打ち切った。同社が管理するアパート物件の空室率は20%を越える水準まで悪化。アパートオーナーに支払う賃料総額が入居者から得る転貸料総額を上回る逆ザヤとなり、賃貸事業の大赤字によって同社のキャッシュフローはきわめて厳しい状況に陥った。
3.解約に向けて空室状況をコントロール
ただ、実際はリーマンショックだけが原因かと言うと、そうではなく、近隣にどんどん物件を建てたたために、その為空き室が増加、しかも、レオパレスは、空き室状況を調整できる立場にあるので、古い物件を解除してその住人を他の新レオパレス物件に移転させている。 あくまでも、住人の意思と言っているが、「残るとテレビ、冷蔵庫、洗濯機、ベッドといった家財道具インターネットも使えなくなる。近くにもっと新しい物件で、同様の条件で賃貸できる物件がある。」等と説明されれば、住人が移転してしまうことは簡単に想像できる。 やりたい放題の末、自分の利益だけのために、オーナーを切捨てるのは、サブリースを勧誘し、事業を予測・提案した責任者として許されない。市場を無視し、建設した結果、赤字が膨らんで行った。この赤字は自己責任でもあった。結果、レオパレス21は、オーナーに支払う賃料の減額交渉を開始せざるを得なかった。
支払い賃料の引き下げと空室損失引当金戻入益等の発生によって、2013年決算の純利益は2期ぶりに黒字に転換した。だが、そのしわ寄せを受けたのが同社の勧誘によってアパートを建設し、サブリース契約を結んだアパートオーナー。しかも、これまでに多くのトラブルが急激に発生した背景には、同社が取り組む賃料の減額交渉が、実は解約を導くための前提交渉だった。
4.解約「終了プロジェクト」内部メール
相談センター(日本住宅性能検査協会)が入手したレオパレス21の内部メール(内部告発2011年9月) (資料)には、「いよいよわれわれの力が試されるときです・・」。2011年8月10日、同社幹部から各現場責任者に対して「終了プロジェクト」の奮起を促すメールが一斉送信された。終了プロジェクトとは、中途解約条項が結ばれている収益悪化物件について、サブリース契約の解除を図る仕組み。メール文には「内容証明等を積極的に使用し、交渉困難な案件は解約通知を送付して3ケ月後には全室明け渡しとする」よう指示が飛んでいる。
さらに、「10年超の案件は基本的に解約を前提とした交渉を行なう」として、「9月以降の本格的解約目標設定に先立ち、月内に一定の確率で解約に持ち込むためのスキーム・トークフロー・業務フロー等を構築する」と記されている。また、「解約を辞さない強気の交渉」「オーナーからの解約の話が出ない場合はそもそも提示額が低すぎる」など賃料の大幅減額の提示を促しているほか、10年未満の物件についても賃料減額を目指すように指示している。文末では、「10年超えは基本解約という意識が足りていなし社員が見受けられるので、各責任者は意識付けを徹底するように」と締めくくっている。上場企業としてのあるべき「公益」の精神の欠片もない内容だ。
入手したメールは社会に対して多大な影響を及ぼすと判断、マスコミ・専門誌に公表した。これを発端として、一般に言われる「サブリース問題」が顕著化して行った。
資料2011年8月10日付け「終了プロジェクト」メール(内部告発)

サブリース契約のスペシャリスト「サブリース建物取扱主任者」

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